快削冷間ダイス鋼QCM7 富士重工業で採用決定

  [2003/06/03]
 

  山陽特殊製鋼株式会社(社長 佐々木宏機、本社 姫路市)の開発鋼種QCM7がこの度、富士重工業株式会社で正式採用されました。
QCM7は、優れた被削性と機械的特性を有する冷間ダイス鋼(工具鋼)で、冷間プレス用金型用鋼として良好な特性が好評を得ています。当社はこの開発鋼種の販売を一昨年から開始し、自動車部品メーカーや金型メーカーを中心に販売量を増やしてきました。今回、富士重工業において、深絞り金型のサンプル評価の結果が良好で、トータルコストダウンが見込まれることから正式採用に至り、5月23日に富士重工業から発表された新型レガシィの製作用金型として使用されています。
当社は、第5次中期経営計画(平成14年度〜16年度)に「営業力の強化」を掲げ、新商品の拡販に注力しており、QCM7を工具鋼分野における当社の主力商品に育てるべく積極的な営業活動を進めています。なお、この技術内容を含めた発表を、冷間ダイス鋼QCMシリーズ(QCM7、QCM8、QCM10)と題して、6月17〜18日に東京大田区産業プラザPIOで開催される「型技術者会議2003」(型技術者協会主催)において行う予定です。


背景
最近の自動車部品のネットシェイプ化やハイテンに代表される素材の高強度化にともない、これらの塑性加工に用いられる金型には、より高強度な金型材が必要となっており、これまで金型材として使用されていた鋳鋼、合金工具鋼やフレームハード鋼から、ダイス鋼への置き換えが進み、ダイス鋼の比率は増加する傾向にある。一方、重切削を要する深彫り形状の金型への適用は、ダイス鋼の被削性改善による金型の加工時間短縮やコスト削減が課題となっている。このようなニーズに応えるべく開発されたQCM7は、主に自動車部品の冷間プレス型や鍛造型に使用されており、特に曲げ型や絞り型で、ユーザーに好評を得ている。


QCM7の特長
QCM7は炭化物と硫化物の分布状態を制御することにより、従来の汎用冷間ダイス鋼SKD11の被削性を改善するだけでなく、靱性や疲労寿命も大幅に改善することで、高負荷環境での割れや端部欠損(欠け)を抑制し、金型寿命の向上にも貢献できる高機能な金型材料である。
@ 優れた被削性:焼なまし材のフライスやエンドミル加工において、SKD11に比べて、 加工時間が30%以上短縮、加工工具費用が50%以上削減できる。また、焼入れ焼戻し 状態での切削性も良好である。
A 優れた機械的特性:SKD11に比べて、2倍以上の靱性、4〜5倍の疲労寿命を有する。
B 高硬度:高温焼戻しにより62HRC以上の高硬度が得られる。
C 表面処理性:TDやTiCなどの各種硬質表面処理性が良好である。


今後の展開
現在、QCM7は主として自動車部品メーカー、金型メーカー向けに販売を行っている。今後は、他の大手自動車メーカーにも販売を拡大すべく、鋭意取り組んでいく。


(ご参考)
【金型の製造〜廃却までの概略工程】
製品図 → 金型図面製作 → 粗加工 → 熱処理 → 仕上げ加工 → 組立て → 検査
→ プレス加工/鍛造用型に使用(⇔補修) → 寿命/廃却

【QCM7の位置付け】



【用語解説】
冷間ダイス鋼 冷間(常温)でのプレス加工や鍛造に用いられる金型用の特殊鋼。  
冷間プレス型 自動車ボディなどを成形する、いわゆる板金プレス型。
鋼板を「切る」「曲げる」「絞る」などの加工に使われる金型/工具。
深絞り金型 深いくぼみのある部品を絞り加工によって成形する金型。
ネットシェイプ化 素材(棒鋼・鋼管)の状態から、より最終製品に近い形に加工すること。
素材メーカーなどがネットシェイプで供給することにより、調達側(部品メーカーなど)のコスト引き下げにも寄与するもの。
ハイテン 高張力鋼(High Tensile Strength Steel)の略称。一般に、引張り強さが490N/u以上の鋼。
近年、軽量化と安全性向上を目指す自動車業界での適用が拡大している。
フレームハード鋼 必要部のみをバーナーであぶって焼入れする際に、安定した焼入れ硬さが得られるようにつくられた鋼。自動車のバンパーなどの大型プレス型に使用される。耐摩耗性や強度面ではダイス鋼に劣る。
重切削

完成金型形状を削り出す際に、素材からの切削加工量が大きいこと。

冷間鍛造型 ギア、コンロッドなど3次元形状の製品を冷間で成形する際の金型。
焼なまし材 切削加工しやすいように、熱処理で軟らかくした状態の素材。
高温焼戻し 工具鋼などを強く粘い状態にするために、焼入れおよび焼戻しという熱処理を施す。
一般に焼戻しの温度には、200℃程度と500℃程度があり、後者を高温焼戻しと呼ぶ。
フライス加工 滑らかな平面にする切削加工。
エンドミル加工 金型の型彫り部分や溝、側面の加工。曲面の加工も行う。
靱性  鋼材の粘さ(割れ難さ、欠け難さ)をあらわす特性。
靱性が低いと早期に金型が破損してしまう。靱性が高いほど、割れ、欠けが生じにくく、金型寿命が延び、より厳しい応力環境下でも使用できる。
疲労寿命 通常は破壊しない小さな応力でも、繰り返し負荷されると鋼に亀裂が発生しやがて大きく破損する。この現象を疲労破壊といい、これに至る寿命を疲労寿命という。
硬質表面処理 鋼材に耐摩耗性などの特性を付与するため表面に硬い被膜層をつくる処理。
TD処理 鋼材の表面にバナジウム炭化物を生成する表面処理方法。
自動車部品の曲げ型や絞り型など、厳しい使用環境の金型においては、焼付対策として広く利用されている。
TiC処理 鋼材の表面にチタン炭化物を生成する表面処理方法。
TD処理と同様に、金型の焼付対策として、広く利用されている。
ロックウェル硬さと呼ばれる鋼材の硬さ水準を表す単位。
HRC ロックウェル硬さと呼ばれる鋼材の硬さ水準を表す単位。
焼なまし材の硬さは20HRC程度であり、62HRCは非常に硬い。


以上
 
【 お問い合わせ先 】

山陽特殊製鋼株式会社 総務部 総務グループ 先水(センスイ) (Tel. 0792−35−6003)
Eメール: webmaster@himeji.sanyo-steel.co.jp



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